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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

さらばロシア~旅の終わりは蜂の巣とともに~

Yoko

 

 「君の旅も、これで終わりだね」
 朝焼けで黄金色に輝く、ロシアの大草原のど真ん中だった。ポリーナのお父さんがぶっとばす車の中で確かに旅の終わりを実感していた私は、そのしみじみとした言葉にぐっときてしまった。
 イギリスでの短期留学中に仲良くなったロシア人のポリーナに会うため、大学の夏休みにサンクトペテルブルクを訪れてもう2週間。ロシア旅行の終わりに、ポリーナとご両親は私を夏の別荘へと案内してくれた。ロシアでは短い夏を楽しむために別荘を持つのが珍しいことではないらしい。ポリーナ家の別荘はサンクトペテルブルクとモスクワの中間にある鉄道駅から何十分もかけて草原を抜けたところにあり、自然に囲まれた湖のほとりにちょこんと建っていた。後部座席で揺られながら、森でキノコを探したり、裸同然で湖に飛び込んだりしてポリーナと遊んだことを思い出しつつ、そうだ、旅は終わるんだ、と思った。最後の晩、ポリーナのお母さんは私に素敵なおみやげを持たせてくれた。
 満月が湖面に映え、青い夜空が美しい夏の夜だった。夕食後、これ、食べてみたら、とお母さんの出してくれたお皿を見てギョッとした。盛られていたのは立派な蜂の巣。とろりと蜜をまとい、宝石のような佇まいだ。「うちの庭でとれたのよ」とお母さん。こわごわ、蜂の巣をかじってみるとほろりと砕けた。「おいしい!」すごく濃い蜂蜜の味。蜂の巣は口の中でたちまちとろけて、小さくなってしまった。あまりの美味しさに驚く私に、「家族の皆さんと一緒に食べてね」とお母さんは箱にたっぷりの蜂の巣を詰めてくれた。お母さん、ありがとう。受け取りながら、せっせと蜜を蓄えたミツバチを思った。
 草原に日が昇り始めた。駅は近い。お父さんの車は全速力だ。旅が終わる。私には蜂の巣がある。ポリーナのお母さんがくれた大切な蜂の巣だ。さあ日本に帰ろう、そんな気分で、大草原を駆け抜けていった。

 

(完)

 

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