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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

思い出のひとすくい

峰月ナガメ

 

 私にはちょっとした特別な習慣がある。それは、毎週金曜日の夜にスプーンひとすくいのハチミツを食べることだ。
 そんな私が愛飲しているハチミツは百花蜜というもので、クリやレンゲソウ、ヒマワリなどの花粉で出来ており、毎年甘さに若干の違いがある。飲み込んだとき、喉を焼くように甘いものもあれば、マイルドで花の匂いがより強いものもあったりする。
 そしてこの百花蜜、なんと高校生たちによって管理、収穫、販売されているのだ。実のところ、私はその高校の卒業生で、実際に養蜂に関する授業を受けていた。高校では、かつて私がしていたように、つなぎを着て防虫ネット付きの麦藁帽子を被りながら作業をしているらしい。瓶に入ったハチミツを見ていると、ミツバチに刺されないよう、真夏でも長靴とゴム手袋をつけて作業していたのを思い出す。
 卒業した今でも、在学中に口にしたハチミツの味が忘れられない私は、母校の文化祭で販売される瓶詰めのハチミツを毎年かかさず買っている。
 私にとって、金曜日の夜に食べるひとすくいのハチミツは、そんな思い出と、ミツバチへの感謝を忘れないための特別なものなのだ。そしてこれからも、このひとすくいの幸せを味わう習慣をやめることはないだろう。

 

(完)

 

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