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蜂蜜エッセイ応募作品

夏みかんジュース

もとずみ 純

 

 幼い頃、夏休みに遊びに行くのが恒例だった祖母の家の庭には、大きな夏みかんの木があった。海水浴、虫捕り、畑で野菜の収穫……楽しいことはたくさんあったが、祖母の作る夏みかんジュースを飲むのも楽しみの1つだった。
 材料は、庭の木に実り、初夏に収穫、皮を剥いで小房に分け凍らせておいた夏みかん、缶詰のパイナップル、はちみつ、水。それらをすべてミキサーに入れ、撹拌する。最初は凍った夏みかんが砕けるガガガッという大きな音がするが、しばらくして音がしなくなったらできあがりだ。
 お手伝いが好きだった私は、いつもはちみつをミキサーに入れる係だった。
 「はちみつはスプーンで3すくいね」
 と祖母に言われて手渡されるはちみつスプーンは先がころんと丸く、くるくると回してはちみつを絡め取る形をしていた。初めて使い方を教わったのは幼稚園の頃だっただろうか。大きなビンにたっぷりと入ったはちみつの中にスプーンを入れると、ねっとりとしたはちみつがスプーンに絡みついてくる。こぼさずに、いかにたくさんのはちみつをすくい、いかにたくさんのはちみつをミキサーの中に落とすか。甘党の私はジュースを甘く仕上げたくて、キラキラと光るはちみつの中でスプーンを動かしては、いつも真剣に考えていた。たかだかはちみつをスプーン3杯ミキサーに入れるだけなのに、熟考しながらはちみつの中でスプーンをくるくる回す私を見て
 「我が家のプーさんがまたはちみつで悩んどる」
 といつも祖母に笑われていた。
 縁側に座ってセミの声を聞きながら飲む夏みかんジュースは、冷たくて、すっぱくて、ほろ苦くて、けれどとろりと甘い、夏の思い出の味だ。
 そういえば、夏みかんジュースを最後に飲んだのはいつだっただろう。大人になってからは飲んだ記憶がないので、少なくとも15年以上遠ざかっていることになる。
 今年は私が作ってみよう。はちみつはたっぷり3杯。懐かしい、思い出の味に会えるはずだ。

 

(完)

 

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