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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

極上の生活

やま

 

 子供のときから様 々な場面で、はちみつはいつも私の生活の隣にいます。例えば ・ ・ ・
 何度も練習して逆上がりができたとき。そんな嬉しいときは、母が「頑張ったね」とご褒美にはちみつをスプーンでくるっと一すくいしてくれます。
 畑仕事の手伝いをして、父に「ありがとう」と言われたとき。そんな喜ばれたときは、父がはちみつを豪快にぐるんとすくって「助かったよ」とにこにこしながら渡してくれます。
 学校で友達とけんかしたとき。そんな落ち込んで帰ってきたときは、縁側で祖母と一緒にはちみつの飴を頬張ります。祖母は「うん、うん」ってずっと聞いてくれるから、自然と「明日私から『ごめん』って言おうかな」と穏やかな気持ちになるのです。
 大人になり、一人暮らしを始めるようになっても、はちみつはいつも私の隣にいてくれます。
 職場で重要な仕事が無事に終わったとき。そんなほっとしたときは、自分へのごほうびにはちみつを紅茶に入れてゆっくり一休み。ゆらゆら溶けるはちみつの紅茶を口に含みながら「仕事って大変なだけじゃないんだなあ」とまろやかな甘さと嬉しさがじんわりと体に染み渡るのです。
 朝、なかな起きられないとき。そんな目が覚めないときは、トーストにバターを薄く塗り、たっぷりとはちみつを塗れば、活力が腹の底からみなぎります。
 そして今、はちみつはいつも私たち家族の隣にいてくれます。
 家族に嬉しいことが起きたとき。日常の小さな喜びも、はちみつを皆で味わえば、小さな幸せは大きな幸せへと変わります。
 家族が落ち込んでいるとき。「どうぞ」とはちみつをすくい、ゆっくり話を聞きます。私がかつて子供のときに、はちみつと共に話を聞いてもらい嬉しかったように、今度は私が家族に同じことをしたいのです。
 はちみつの優しい甘さがゆっくりと体に溶け入るように、家族の心がふわりとほどけ繋がっていく、これが私のはちみつのある極上の生活なのです。

 

(完)

 

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