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蜂蜜エッセイ応募作品

紅茶とアカシア

Tozuka

 

 日頃はミルクかブランデーを溶かした紅茶を飲むのだが、脳が糖分を欲するときは蜂蜜を入れる。こんなときに砂糖ではなく蜂蜜を入れられるのが紅茶の良さであり、紅茶によく馴染むのが蜂蜜の良さである。そう思って、人生で何十度目かに百貨店の紅茶売場を訪れたとき、確かハンガリー産の、てのひらサイズのボトルに入ったアカシアの蜂蜜が目についた。日頃はカナダ産やアルゼンチン産の手頃な蜂蜜を買うのだが、このとき見た蜂蜜は他のものよりも高価で、アカシアの蜂蜜というのはイギリスのお貴族様が召し上がる代物だろうと思って、そのときは普段通りの蜂蜜を買った。後になって気が付いたが、私はアカシアが何か知らないばかりか、そうでない蜂蜜が何という植物に由来しているかも知らない。さらに言えば、貴族の紅茶事情も知らない。あの蜂蜜がアカシアだから高価だったのか、あるいはハンガリー産のものが高価なのかもわからない。蜂蜜とは長い付き合いでありながら蜂蜜の本質を知らず、偏見と懐への配慮のみで新しい蜂蜜との出会いを逸した消極を恥じ、後日改めてアカシアの蜂蜜を手に取った。家に帰ってスプーンで味わうと、いつもより少し柔らかい、香り高い薄味の果汁で蜂蜜を希釈したような、優しく華やかな甘さが舌を包んだ。小さじ一杯ほどを紅茶に垂らすと、いつもより柔らかいそれは、豊かな香りだけを水面に置き去りにして、穏やかに紅茶のなかに消えていった。しかし、私はまだアカシアが何かを知らない。いつもの蜂蜜がどのような種類のもので、果たして手頃なそれらがアカシアではないのかどうかも、私は知らない。

 

(完)

 

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