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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

悲劇を救う蜜の味

古谷茶色

 

 大学で役者の勉強をしていた私は日夜芝居に明け暮れていた。大学生活の大半の時間を芝居に費やし、友人と呑みに行っても芝居の話ばかりしていた。
 そんな私の4年生になって最初の公演。新年度最初の公演ともあって、先生方や新入生を含む沢山の後輩が期待を寄せる大事な公演。私は重要な役を任された。物語の核となる役柄。私はその大役を演じ切ってやる、という自信を胸に本番まで稽古に打ち込んだ。
 本番3日前の朝。突然の事だった。
 自分の思うような声が出ない。その瞬間、自分の顔が青ざめていくのが分かった。朝のミーティングで私の声を聞いた周りの役者、スタッフも異変に気づいた。そして、私と同じように青ざめた顔をしていた。不安、動揺、困惑、苛立ち、色んな感情が入り交じっている場の空気。私は何とかしようと頭を回した。風邪薬は飲んだ。稽古中以外はマスク。控え室の湿度は高くした。それでも不安な私は稽古の合間に近くのスーパーへ行き、蜂蜜を瓶で購入。湯に溶かし、とにかく飲む。喉に直接入っていく蜂蜜は一番効きそうな気がした。私はとにかく効いてくれと願った。その日から本番まで、こまめに蜂蜜湯を飲み続けた。
 本番の初日。本調子とは言えないが、私の声はだいぶ元に戻っていた。その声を聞いた周りの役者たちも一安心。もちろん本番前にも蜂蜜湯。私の心の支え。その頃には蜂蜜湯の味が好きになっていた。本番の2日目には声は万全な状態になり、2日間の公演は両日共に無事終わった。
 その公演から大学を卒業するまでの1年間。私は蜂蜜と共に芝居を続けた。蜂蜜は私にとってお守り代わりになっていた。それと同時に、本番直前に体調を崩した自分を反省するための大きな存在になっていた。
 あの時、私の喉が治ったのは蜂蜜のおかげか、薬のおかげか、はたまたプラシーボ効果か。それは分からないけど、蜂蜜が私の心と身体を支えてくれたことは事実だった。ありがとう。

 

(完)

 

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