井上
僕は今年、結婚した。
4年間の交際を経て、ようやくゴールイン。
これから、はちみつのような甘い日 々が待っているだろう。
そう思うだけで、わくわくする。
そうそう。妻は、交際していたころから、
不思議なオリジナルソングを無意識のままに歌っていた。
「はちさん、はちさんこーわいの。こーわい、こーわい、こーわいの♪」
シンプルでクセになる曲だった。気分が良いと横に揺れながら、口ずさむのだ。
「こわい」と言いながらも、花畑とみつばちが目に浮かぶような幸せな曲である、
妻の機嫌が良い証拠であるから、僕はこの曲が大好きだった。
そしてある日、妻の実家に尋ねたときのこと。
義父がテレビ台を漁り、僕に1本のビデオを見せてくれた。
幼い少女が、庭の花壇に向かって横に揺れている。
「はちさん、はちさんこーわいの。こーわい、こーわい、こーわいの♪」
それは紛れもなく、僕の好きなあの曲だった。
そして、その少女は、彼女だ。
変わらないその姿に、僕は嬉しくなった。
僕の妻は、天然はちみつのように甘く、純粋なままだと。
知ることができたから。
(完)
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