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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂の力を戴いて

加藤千代美

 

 私の母は、夫を四十歳の時に突然亡くし、三人の子(私は末子で十歳だった)を女手ひとつで育てあげた。母は若い頃から、軽い喘息持ちで、特に冬場の咳は、しんどそうだった。しかし母親とは強いもので、我子の為なら…と働き続けた。
 私が成人となり、結婚することによって、少しずつ母の荷も下りていった。しかし、元来、農作業などしたことのない私が、婆ちゃん母ちゃん農業の作業はきついもので、毎朝起きるのがつらく、私は体力的精神的に落ち込んでいった。三十歳の時である。
 そんな私を見て、母が手渡ししてくれたのが、小さな瓶に入った少し黄色がかったドロドロのものだった。
 「騙されたと思って、これを毎日飲んでごらん。」
 と、それ以上のことは言わずに帰っていった。『生ローヤルゼリー』だった。私は、こんなおいしくない物が女王蜂の力の源になるとは信じ難かったが、毎日、耳かきほどのスプーンで飲み続けた。
 もちろん結果、効果がすぐに出るものではなかったが、不定愁訴で病院に行くことは無くなった。
 現在は、カプセル状のものを愛飲しているが、私ももう還暦、農作業は減ったものの、孫守りという大切な役割りも増えた。いつまでも孫たちと笑いが絶えない婆ちゃんでいたいと、忘れずにローヤルゼリーを飲んでいる。

 

(完)

 

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