渡辺 碧水
【本物の蜂蜜の買い方(二)から続く】
実情や背景を少し掘り下げてみたい。
(一)で挙げた定義の裏表現は、採蜜から店頭配列までの間に「何かを足し(加え)たもの、何かを引い(除い)たもの、(高温で)加熱したもの」が蜂蜜として販売されている例があり、いずれかの処理(処置、操作)がなされた蜂蜜は「偽物」だ、とみなす。
多くの人は、養蜂現場での採蜜作業も、容器に詰められて店頭で売られている様子も、少なくとも映像や写真では見たことがあるに違いない。
これらからわかるように、そのまま何も処理が行われないで商品化されることは、まずあり得ない。例えば、最初の採蜜で混入してしまうゴミ類の不純物を取り除くなどは、むしろ必須の処理である。
そして、販売品には、それなりに必要な処理が行われて当然だと、だれもが認めることだろう。
「偽物」には、不当な利益を得るために「本物」に似せる作為が加えられる。蜂蜜の場合も、いたちごっこになっていて、見破るにはDNA鑑定を必要なほどにまで、限りなく似たものが作られているらしい。
国内の生産で応じきれないのなら、不足する分は輸入に頼らざるを得ない。外国製品で補われ、しかも適値で買えるならば、消費者には歓迎される事態であろう。
それが、もしも国産だけが本物だとする消費者の国産信仰(国産志向)が強くあるのなら、せっかくの輸入品を排除することになりかねない。
需要の多さや価格の高額化は、偽装の誘惑へ駆り立て、偽物を作らせる状況を生む。消費者自身も結果として偽物づくりを助長しているかもしれない。
日本の輸入業者も、外国の輸出向け生産者も、日本国内産と見分けのつかない商品にするよう精力を注ぐことになりかねない。そんなことになってしまえば、まがい物づくりを助長し損をするのは、実は消費者自身ということになろう。
業界には、必要以上に加えたり、除いたり、加熱したりせず、また、そのようなものは輸入しないことで、信用と信頼を確立してほしい。
【本物の蜂蜜の買い方(四)へ続く】
(完)
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