五十嵐 香乃
 蜂と私の出会いは40年前まで遡る。
   「おかあさーん」
   目を輝かせた私が
   「ほらぁ、いいもの」と握りしめた手を開く。
   すると瀕死の蜜蜂がフラフラと飛び立ち、私の手の平はプクゥと腫れ上がったそうだ。
   
   その後蜂自身とは疎遠だが、ある時はヨーグルトに、またある時はハニーバターにハニーマスタードと、蜂蜜とは良い関係にある。
   そんななか、大学芋のたれ作りに蜂蜜をと思い付いたときの胸の高鳴りといったら!
   
   さらにステディな関係になるため、手を出したのは蜂の子である。
   最近よく耳にする昆虫食、ぜひとも食してみようじゃないか!
   鼻息荒く、友人と選んだ蜂の子。
   パッと見は何かの粒。
   よく見れば、当たり前だけど、虫じゃーん!!
   恐る恐る口に入れる。
   味は甘辛く、拍子抜けするほど美味しい佃煮だ。
   共にやる気満 々だった友人は、スプーンに乗ったそいつを見ただけでギブアップした。
   根性無し!
   それじゃあ、ということで。
   蜂の子を細かく刻んで、ナッツ類を荒く砕く。大葉を千切りにしてそれらを混ぜる。
   はい、高級ふりかけ召し上がれ!
   友人もこれは美味しいと言って食べる。
   いや、君のは食わず嫌いだけどな。
   
   その後、虫嫌いの母と弟にもふりかけを振る舞った。
   「美味しいけど、これ何が入ってるの?」
   当然の疑問である。
   「じゃじゃーん! 実は…蜂の子だよ」
   「えーっそうなの? びっくり! あはは~」
   みたいな談笑を予想をしての、軽いいたずら心があったことは認めよう。
   しかし! しかしである!
   ふたりの性格上、笑いと共に終了するだろうか?
   いやするはずがない(←反語)
   真実を伝えた後、彼らの怒りがどれほどのものかと想像すると、あまりの恐ろしさに私は言い出せませんでした。
   「えっと中身は…ナッツとツナ的なものだよ」
   意気地無し!
   母よ、弟よ、すまん。
   この場を借りて謝らせていただこう。
   
   ちなみマヌカハニー最強説を支持する最近の私は、彼氏依存の女のようにマヌカハニーすがって生きている。
   毎晩一匙の甘い幸せである。
(完)
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