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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

はちやのチカちゃん

あはは

 

 あたしが小学校の時、はちやのチカちゃんっていう子がおってね。本当は「はちみつや」なんやけど、みんな「はちや」って呼んどったわ。はちやのチカちゃん家にはトラックがあってね、トラックの荷台に巣箱積んで、お父さんとお母さんは春から秋まで花のあるところに旅するんやって。時 々家に戻ってきては、また旅に出るんやって。そやでチカちゃんはいつもおばあちゃんと一緒におったなあ。「お父さんとお母さんが蜂みたいや。チカって、千の花って字ィ書くんやで。花はここにもあるのにな。」って笑っとったけど、淋しかったんやろな。本当にええ子でね、国語が得意な子やったけど、今は何しとるんやろ。もう随分前にお店も閉めたみたいやし。昔はあたしの母親が、空き瓶持ってはちやさんに行ってね、はちみつ分けてもらいに行っとったんやけど、今ほど甘いものがない時代やったし、はちみつ食べたときのあの味は、よう忘れられやんなあ。
 
 はちみつの瓶を実家に買っていくたびに、母はこんな思い出話をした。60年以上前のことなのに、その時代をそのまま瓶から取り出したかのように鮮やかに話す。
 これから先、私が母のように年を取った時、私の子どもがそうなった時に、懐かしく思い出すのはどんな味なのだろうか。
 今は、世界中のお菓子を手にすることができるし、ちょっと頑張れば有名なパティシエが作ったお菓子だって食べられる。だけど、世界一のパティシエだって、はちみつを作ることはできない。小さなミツバチにしか作ることのできない、はちみつ。母が幼い日に食べたはちみつの話を聞きながら、私の子どももまた目を輝かせて、はちみつがついたスプーンを舐めている。
 いつまでも、シロツメクサやレンゲの野原があって、美しい花が咲き続けますように。その花の間を飛び交うミツバチを慈しむ平和な世の中が続きますように。そんなことを考えながら、私は瓶の中のはちみつをスプーンですくう。

 

(完)

 

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