みかこ
「蜂蜜」には、優しい甘さがある。とても優しい甘さが。そんな甘いものには、温かく、優しい記憶が多く共にある。私にも、一つ、そんな思い出がある。
長期の休み。遠くに住む祖父母の家に帰るたび、よく、幼い私は上手く寝付くことが出来なかった。久しぶりに会う親戚。家族でのお出かけ。疲れているはずなのに、いろいろな事が楽しくて、眠れなかったのだ。
そんな時、私は必ず祖母のところへ向かった。いつも祖母は、誰よりも遅くまで起きていて、さまざまな事の後始末をしていた。自分も疲れていただろうに。しかし、私が来ると「あら、あら」と笑って、一つのものを用意してくれた。
それは、ほんのりと甘いホットミルクだった。わざわざ鍋を使い、弱火で、ゆっくりと牛乳を温め、そこに少しづつ蜂蜜を加えたものだ。普段は、一つのものにお金をかけない祖母が、珍しくお金をかけていたのが、蜂蜜で。そんな蜂蜜と、祖母お得意のやり方で作られたホットミルクは、何だか特別で、本当に美味しくて、私は大好きだった。
今は、祖母も歳をとってしまって、もう作ることは出来ない。私も、まだまだ祖母の腕には追い付けない。だからこそ、あのホットミルクは、私にとって「蜂蜜」に関する、一番優しい記憶となっている。
これからも、私は蜂蜜を見るたびに、思い出すのだろう。あの優しい甘さを。
(完)
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