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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

手の美しさ

三宅雄城

 

 家庭菜園を始めたのが5年前だ。ところが雑草は茂り、虫は食べあさり収穫は0に等しい。花作りに切り替えた。スイセン、シャクヤク、ユリの球根類を植えた。こちらは草が生え、虫が発生する前に、大した手入れもせずに蕾をつけ、花を咲かしてくれる。
 株は年 々大きくなり丈夫だ。太陽の恵みと土の力に感謝している。
 近くに住む小4の孫娘が友達と一緒によく遊びにくる。ある日、シャクヤクとユリの花をその友達にことづけた。その翌日だ。妙齢のご婦人が尋ねてこられた。手に土産ものを下げておられた。お互いに「あら、まあ―」と声をかけあった。一緒に御茶の稽古をしている人であった。
 年を取ると記憶力は確かに衰える。しかし感性は豊かになる。
 花木、山河が季節ごとに移ろう様子を見ると、心が安らいでくる。田植えのために水を引き入れた稲田。夕暮れ、傾く陽射しに水田がきらめいている光景は思わず感嘆の声を上げてしまう。やがて月が昇り、棚田に月影が浮かんだ姿は幻想的ですらある。「田毎の月」という風情ある言葉があるほどだ。蜂蜜も同じだ。今では、感性が研ぎ澄まされ、砂糖とは違う淡いまろやかな本来の味が分かるようになった。
 手元には「生き生き元気村 ・ ・ ・」の地元産の蜂蜜をいつもおいている。彼女は、はちみつ屋の奥さんであった。土産は蜂蜜であった。妻と3人で蜂蜜の話に花が咲いた。
 糠味噌へ 思い切る手の 美しさ
 御茶の稽古の時にも感じていたが、とりわけ、彼女がお茶を立てる時の手の美しさには心を動かされていた。蜂蜜を食べ、御茶で鍛えた、飾らない手に教養が滲みでていた。あれから5年が経った、蜂蜜と花との交換は今でも続いている。深いところで人間への信頼をつなぎとめてくれた蜂蜜である。

 

(完)

 

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