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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

藤とミツバチ

ほうりゅう児

 

 三十年ほど前のことです。田舎に念願のマイホームを手に入れました。猫の額ほどの庭があります。久 々の土いじりが楽しくて、週末ごとに植木や花を買ってきて、ところ狭しと植えました。そして小さな庭はあっという間に満員電車みたいに。「この藤はどこに植えようか?」「もう植えるところはないわよ」「うーん、じゃあ玄関脇は」「玄関は北側よ、いいの」「たしか、藤の花言葉はウェルカムだからちょうどいいよ」というように半ば強引に玄関横に藤が陣取ることになりました。
 我が家の藤は四月下旬から五月上旬にかけて三週間ほど花開きます。短い藤の房が日ごとに大きく垂れ下がり、その変化を見るのが楽しみです。藤の木そのものも年 々伸びて、領域を広げそれが玄関から駐車場の前まで覆い尽くすようになりました。この時期になると我が家の前を散歩する人が増え、「見事ですね」と声をかけてくれます。
 花が開き始めるといつものお客さまが早朝から訪れます。そうミツバチです。朝会社に行くために玄関を開けると、多数のミツバチが目の前を飛び交っています。ミツバチだけではなく、ときにはクマバチも訪れ、そのうなるような羽音に思わず身をすくめてしまうこともたびたびです。「すごい数のミツバチだね」「そうね、どこから来るのかな」「この近くに養蜂農家ってあったかな」「聞いたことないわ」「毎日来るから、どこかではちみつがいっぱい取れているね」
 その年の秋のことです。水道が地中で漏れているのではと水道局の人が訪ねてこられました。ちょうど藤の木の下に水道管があり、藤の根が絡んでしまったようです。二十年以上咲き続けた藤はこのとき寿命を終えることになりました。悲しい一日でした。
 今でも春になるとミツバチが飛んできます。あのときの百分の一ぐらいです。ミツバチやはちみつを見ると、見事だった藤の花やあの時のミツバチの群れが思い出されます。

 

(完)

 

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