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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜ブームの真相

白川 陽子

 

 「買い物に行ったら、蜂蜜を買ってきて。」
 旦那は録画したテレビドラマを観ながら、ちらっとこちらに目を走らせてそう言った。
 わかったわかった、と私は振り返りもせずにひらひらと手を振って答える。
 
 入籍し、一緒に暮らし始めてから早ひと月。実家暮らしが長かった私はまだまだ新生活に慣れることが出来ず、終わることのない家事に追われる毎日だ。
 仕事も続けていたため、残業なんて日にはもうお手上げ状態である。
 
 新婚生活、もっと楽しいものだと思っていた。
 
 疲労とともに、心の中に暗い雲がもくもくと広がっていくのを感じる。雲を取り払うように勢いよくドアを開け、私は外の空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
 気を取り直して携帯に今日スーパーで買うものをポチポチと入力していく。
 
 もう、なくなったのか。
 
 出かける間際に旦那から言われたことをふと思い出しながら、指を動かす。
 前回蜂蜜を購入したのは、確かつい一週間前。正直、空になるのが早すぎるように思う。
 
 というのも、旦那に空前の蜂蜜ブームが到来しているのである。蜂蜜が入れられそうな料理、飲み物、お菓子、何でも入れてくれと要望が出されているのだ。
 
 一体どうしてなのだろう。
 
 疑問に思いつつも、特に理由は聞いていなかった。
 想像を巡らせることもなく、買い物リスト通りに食材をかごに収めていく。言われた通り、蜂蜜も購入した。
 
 今日の晩御飯はカレーである。煮込む時に少しだけ、隠し味を入れた。
 「隠し味、何を入れたかわかる?」
 蜂蜜ブーム真っ最中の旦那にとっては、これ以外の答えはないのだろう。「蜂蜜!」という元気のよい返事が返ってくる。もちろん正解である。
 
 食べ終わった後にソファでゆっくりしていると、旦那が牛乳に蜂蜜を入れて温めた飲み物を渡してくれた。私はそれとなく、蜂蜜ブームの理由を問いかける。
 
 「だって、最近疲れていたでしょ。少しでも元気になるといいなと思って。」
 
 予想していなかった回答に、思わず目が丸くなる。
 そうか、この人にはバレていたんだ。
 
 きょとんとしている私を少し疑問に思った様子で、「お皿洗ってくるね」と旦那は席を立つ。
 蜂蜜の優しい甘さが口の中に広がっていく。台所に立つ旦那の背中を眺めながら、私は自然と笑顔になっていた。

 

(完)

 

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