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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつドミノ現象の発生過程について

河村 皆生

 

1:マーガリンは焼く前に塗る。
 パン表面は柔らかい上、熱がないのでバターナイフのすべりは悪い。そこを左官がコテで壁を塗り固めるが如く手際よくパン面全体をコーティングする。
 
2:はちみつも焼く前である。
 焼いた後にはちみつを塗るとはちみつがパン表面で流れてしまい、結果食べるときに流れ落ちてしまう。だがトースト前に塗るならばはちみつはパンにほどよく染み込み生地に閉じ込めることができる。
 量は多いと閉じ込め切れずに流れ出るためよくない。しかし少なくても齧ったときのジューシーさが激減してしまう。
 
3:トースト時間は短めに設定する。
 長く焼くとはちみつが焦げ付くと苦味が出てしまう。
 「外はカリっと、中はじゅわっと」これが理想である。
 
 
 私の父は、はちみつトーストが好物だった。
 交代勤務だった父と朝の食卓を同一にすることは毎日ではなかったし、殊更朝に弱かった私は朝食にほとんど執着がなかった。
 だがこのはちみつトーストだけは別である。あの他に類を見ぬ甘く漂う黄金は、優しげな匂いとは裏腹にコーヒーよりも痛烈に私をまどろみから覚醒させた。
 上記の覚書はそんな中生まれた私なりの工夫だ。
 
 母が父のためにこのトーストを焼く。父は必ず2枚食べるので我が家に常備されていた6枚切り食パンは残り4枚になる。
 匂いにつられた私も2枚食べる。トーストは腹持ちが悪いためである。
 弟が、さらに妹が、ワカサギのごとくつられにつられて1枚ずつ。
 はちみつトースト都合6枚。これが我が家のはちみつドミノ現象である。
 
 今や私も所帯を持ち、父は単身赴任、弟は県外へ移住した。かつての朝のこの自然現象ももはや見られまい。さしたることでもないが、だからこそ取り戻せない刻ではある。
 
 ……などと耽っていたら先日、私のはちみつトーストをよこせと4歳になった息子が。横取りして平らげてしまった。
 なるほど、ドミノはまだ続くようである。

 

(完)

 

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