渡辺 碧水
【蜜蜂に赤色はどう見える?(二)から続く】
蜜蜂の眼には「赤は見えず、黒に見える」という。とすると、素人には、黒は色なのではないのかと、けげんに思う。
本筋から離れるので、結論だけ言えば、白や黒や様 々な濃度の灰色は無彩色といい、色がない。彩度がゼロで、色は明度だけで決まり、色相は変わっても色は同じ。
やはり、ちんぷんかんぷん。単純に、どんな色でも光の当たらない側の物影を思い浮かべるとわかりやすいかもしれない。
では、蜜蜂があのように正確な行動ができるのはなぜだろう。人間には見えない紫外線を手掛かりにしている。
蜜蜂の主な特長は紫外線の認識にあり、これによって、周囲を自由に飛び、蜜源の花を見つけ、仲間に餌場である花の位置を八の字ダンスで的確に伝えることができるわけである。
紫外線は太陽から発せられるので、太陽が沈み紫外線が見えない夜には飛べない。ハウス栽培の授粉などで、昼でも紫外線カットの状態になると、訪花活動が狭まったり、しなくかったりする。
(一)で述べたヒラメキに戻って、刺激の強弱から見れば、淡いピンクのワイシャツは蜜蜂をあまり刺激しないと思われるから、「養蜂伝統の知恵から導かれた服装」と言えなくもない。
しかし、赤いエプロンは、黒に見えて、蜜蜂に与える刺激は強い方と言えよう。これを「養蜂伝統の知恵から導かれた服装」とみなすのは無理だろう。
ということで、私のヒラメキは、残念ながら「的を射た」とは言えない。
ここで、既掲載「先達を訪ね養蜂を知る(二)」の記述にも言及しておく。
「言い伝えとして、蜜蜂は、目線上に黒色で光るものを見つけると、警戒し攻撃する特性があるとされる。天敵の熊が黒いからだ、と。だから、黒いカラスも追いかける…」と、そこで述べた。実績のある事実ではある。
ただ、黒く見えるという刺激だけで狙って攻撃するわけではないようだ。巣に近づいてくるもの、攻撃を仕掛ける(追い払おうとする)ものに、色とは無関係に攻撃し、巣や群れを守ろうと襲いかかる。
においに敏感で、嗅覚が鋭い。強い香り、人の体臭、甘いにおいの食べ物などに反応して近づく。大きな音や激しい動きにも敏感だとされる。
要するに、蜜蜂が熊やカラスを攻撃するのは、自分たちが「襲われてしまう!」と、防衛本能を働かせるからだろう。
(完)
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