メイ
インドの大学に来て、一番初めに友達になったのは中東の国イエメンから来た留学生の男の子だった。留学生寮での手続きが上手くいかず、長い間事務員の部屋に座っていた時に突然現れたのが、彼だった。彼は別の事務員さんとヒンディー語でテンポよく話を進めていた。ほとんど聞き取れなかったが、「honey」という言葉だけは聞き取れた。それから、彼はこちらにやって来た。その場に居合わせたご縁にと、彼のいう「グリーンティー」日本でいうジャスミンティーを彼からもらった。その時彼は「これにはちみつを入れるとすごくおいしいんだ」と言っていた。この言葉がずっと離れなかった。お茶に甘く味がついているということもあまりピンとこないのに、その上はちみつを混ぜるなんて、と考えていた。
これをきっかけに私と彼は意気投合し、よく話をするようになった。その時には彼はいつも「グリーンティー」を私に淹れてくれた。私は初めて会った時の会話が忘れられず、「はちみつを入れたいんだ」と頼むと、彼は「おいしいはちみつがイエメンから届いた時、飲ませてあげる」と話した。そしてその代わりに、彼の祖国のはちみつ事情を聞かせてくれた。おじいさんは毎日お湯にはちみつを混ぜて飲むのが習慣になっていたことだったり、料理にも砂糖の代わりにはちみつが使われているという話を聞いた。また、喉が痛い時には、お母さんにスプーン一杯のはちみつを喉に垂らしてもらい、そのまま数秒待って、飲み込むと痛みにとても効いたんだとか。
結局「グリーンティー」に、イエメンのはちみつを入れて飲むという夢は叶わないまま、私はインドから日本に帰ってきた。今でもジャスミンティーを見るたびに、これにはちみつを入れるとどんな味がするのだろうかと思う。しかし、私は彼の祖国からおいしいはちみつが届くまでその味を試すことはないと思う。
(完)
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