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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

じいちゃんとミツバチ

つかもと ちま

 

 「じ、じいちゃん!」驚く私に、じいちゃんは笑ったように見えた。でも実際は、腫れ上がった顔がほんの少し動いただけだった。
 「ほれ、うまいぞ。」と、じいちゃんは私の手に一升瓶を持たせた。中身は、黄金色のハチミツ。ははーん、ハチミツを採りに行って、あちこち刺されたんだな。じいちゃんの手も、腫れていた。「じいちゃん、大丈夫?」「おう、なんともない。」ーーーこれは、四十年以上も昔の、私のこどもの頃の思い出だ。
 きまりが悪そうにしているから、ばあちゃんにこってりと叱られたのだろう。ばあちゃんは、「ハチは恐ろしい。」とよく言う。それに対して、じいちゃんは、決まって、「ミツバチは、かわいい。」と笑う。
 じいちゃんは、山の手入れに出かけた折、ふと「ミツバチは元気かな?」と思い、巣箱に立ち寄るらしい。働きもののミツバチ達が、ちょっと見ない間に、巣板を何枚もこしらえているのを見ると、うれしくなるそうだ。面網も手袋も、持ち合わせていない。だが、蜜の溜まった巣板を見ると、ガマンができない。冬はミツバチが気が立っていると知りつつ、巣板に手を伸ばしてしまうそうだ。刺されても、じいちゃんはあまり気にしていない。やっぱり、ミツバチはかわいいらしい。
 私は、レンゲの花を摘む時によく会うミツバチの姿を、頭に浮かべた。いつもブンブンと忙しげに飛んでいる。私には目もくれない。あんまり熱心に花の蜜を集めているので、そんなにおいしいのかと思い、私もレンゲの蜜を吸ってみた。が、水っぽくてほんの少し甘いだけだ。なぜ、ハチミツはあんなに甘いのだろう?ミツバチって、小さいけれど、本当はすごい生き物なのかもしれない。
 そんなことを思いながら、幼い私は、なぜか正座をして、じいちゃんのハチミツをなめた。
 後で知ったのだが、ミツバチは口元で蜜の膜を作り、風を当てて水分をとばすとのこと。気が遠くなるような作業だ。やっぱり、ミツバチはすごい。

 

(完)

 

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