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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

キャラメル色の小さな物語

船山直子

 

 そのとろりとしたキャラメル色の液体を蜂蜜と教えてくれたのは、優しい叔母だった。まだ学校へ行く前のこと。お金持ちの叔母の台所に迷い込んだ私は、ガラスの瓶に詰められテーブルに鎮座している蜂蜜に一目惚れした。「舐めてみる?」と言われ、緊張しながら人差し指で掬い舌の上に置く。途端、それまでの味覚を覆すような甘い衝撃を味わった。
 幼い頃の思い出は、年を経るごとに大袈裟になったり曖昧になったりするけれど、その光景と味は、半世紀を経た今でも鮮やかなままだ。それから蜂蜜は、私にとって特別なものになった。魔法のように美味しい食べ物。叔母のように綺麗になる食べ物。お金持ちや選ばれた人たちの幸せの食べ物。
 だから初めて母に蜂蜜を買ってもらった時は、物凄く嬉しかった。プラスチックのチューブのあまりキラキラしていないものだったけれど。ヨーグルトの上に花びらを落とすように垂らしたり、ホットケーキに贅沢に渦巻模様をつけたり。そこだけがぱっとモノクロからカラーに変わるような思い出の場面だ。だから、冬の朝、白く固まった蜂蜜を見た時は、悲しくて泣いてしまった。
 何年かして、蜂蜜が出来るまでの工程を本で読んだときは、とても驚いたと同時に、蜜蜂への感謝の気持ちで一杯になった。ひと匙の蜂蜜を作るためにどれだけの労力と時間を費やしているのか。まさに命をかけた産物なのだ。その日から、昆虫や動物、自然への想いの視野がぐんと拡がったような気がする。
 自然が育んだ優しく甘い贈りもの。今も蜂蜜は私の特別な食べ物だ。この先もずっと、その恵みを受け取れるように、自然環境を守る意識を大切にしたい。そして、自分たちが出来ることは率先して行っていきたいと思う。そうやって自分も自然のサイクルの中に入ることで、幼い日の蜂蜜との出会いから始まった小さな物語が繋がってゆくようだ。ひっそりと神秘的な気持ちになったりしている。

 

(完)

 

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