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ミツバチと共に90年――

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 目の前に並ぶスズメバチの幼虫 ・蛹 ・成虫。小さいくせにこの絵図のド迫力と言ったらない。成虫に至っては爪楊枝の先に刺され、楽しげに飛び回っている様子が再現されている。とうにご臨終なのに私の目には生前の姿がありありと浮かんだ。
 さて、ここは会社近所の居酒屋。ゲテモノ珍味を得意とする人気の店だ。私はたまたま上司に呼ばれ、どんなお店かも知らずご来店。このスズメバチたちがどうかただの標本であってくださいという私の願いも虚しく、立派な食材として私を堂 々迎えている。もはや食べる以外に道はない。
 意を決し、まずは幼虫。砂糖醤油で軽く煮つけてあるようだ。勇気を出して一匹口に入れる。が、飲み込めない。なぜ喉の通過をそんなに抗う、幼虫よ。ならば噛み砕くしかない。私は恐る恐る前歯に挟んで噛んだ。「バチン!!」すさまじい皮の破裂音がした。さすが幼虫、若い肌はピッチピチだ。味わう心の余裕はなかったが、幼虫はやたらミルキーで「これは白子だよ」と言われれば、「やっぱり白子はおいしいね」私は返答したであろう。幼虫、クリアだ。
 続いて蛹。こちらはシンプルな塩焼き。素材の味をご堪能くださいという料理長の意思がひしひしと伝わる。意を決して口に入れる。しかし、バチン事件のショックから立ち直れていない私は気が定かではなく、残念ながら味の記憶がない。しかし蛹、クリアだ。
 最後に成虫。こちらは素揚げだ。そんなに大きな瞳で私を見ないでおくれ。口に入れる瞬間、ギョロリと彼と目が合う。実に気まずい。噛んでみるとカリカリと香ばしく、揚げた小海老みたいでいけるではないか。成虫もクリアだ。
 こうして私はおっかなびっくりではあったが成長過程を堪能した。蜂を見かけるとつい逃げたくなるが、蜂は琥珀色の蜜や魅惑のローヤルゼリーづくりができるだけでなく、こうして自らの身を食料資源として捧げることもできる。実に尊い。ありがとう、蜂よ。

 

(完)

 

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