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蜂蜜エッセイ応募作品

胡蝶の夢

あん

 

 こんな夢を見た。
 空を飛んでいる。見下ろすと黄色い自然の絨毯が敷かれ、ところどころに見える濃い桃色が差し色になっている。おかしいな、なぜだか体がとっても軽い。あれ、なぜ黒い羽がついているのだろう。あぁわかった。きっとこれは夢なのだ、そうに違いない。私は夢の中で蝶になって、飛んでいるのだ。それならば、とそっとつつじにとまり、口を寄せる。夢なのだから、味などするわけがないだろう。でも、せっかく夢の中とはいえ蝶になれたのだから、一度くらい花の蜜を吸ってみたい。蜂蜜はあまり好きではないが、花の蜜はおいしいだろうか。ズズーッ。甘い。頭、いや触角がビーンと痺れるくらいにとてつもなく甘い。母は毎朝ヨーグルトにかける蜂蜜によく似ているが、それよりも格段に甘い。そしておいしい。そういえば、あのヨーグルトの表面を覆いつくすほどのたっぷりの蜂蜜は、この菜の花畑に似ている。今までなぜ蜂蜜が嫌いだったのだろう。いや、一旦落ち着こう。問題なのはこの甘さでは無い。蜜が甘いと認識できるこの状況こそが問題なのだ。夢の中で味がわかるとは、一体どういうことなのか。なんだか少し恐ろしくなって、ばっと起き上がった。目を開けると、いつもと変わらぬ朝だった。「もう7時よー。」と下から母の声が聞こえる。いつもは鬱陶しいこの声も、今日は聖母のささやきに聞こえた。そろそろ起きなくては。やっぱり夢だったか、でも蝶になるのも悪くはなかったな、リアルだったし。そんなことを考えながらトタントタンと階段を降りて、テーブルにつく。寝ぼけたままいつものようにお皿を並べて、冷蔵庫から毎朝食べているアロエ入りのヨーグルトを取り出す。ごちそうさまでした。行ってきます。バタンと玄関のドアが閉まり、テーブルの上には残された食器たちと蜂蜜の瓶。あふれるくらいに入っていたはずの蜂蜜は、一滴も残らず空っぽになっていた。

 

(完)

 

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