桜木雪那
 私はそもそもハチミツが嫌いでした。
   家で出てくるスーパーで買ったチューブタイプのものは、独特の匂い、私にとっては臭みがして、あまり好きではありません。某遊園地のハチミツの匂いがする空間を通っても、眉間に皺が寄ってしまいます。
   そんなある日、知人がお土産にと、小さなハチミツの瓶を買ってきてくれました。
   ありがとうとは言ったものの、嫌いなものをどうやって食べればいいのか。たった50gなので、料理に混ぜたらあっという間に無くなってしまいますし、味も分かりません。
   じゃあ最初だけは生で食べようと、パンにかけることを決意。買ったばかりのトースターにあった、付属レシピの「チーズハチミツトースト」を試すことにしました。
   食パンにチーズをまんべんなくかけて、トースターで5分。表面のチーズがぶくぶくと煮えたぎるのを眺めつつ、お皿の上へ。
   そしてハチミツ。細めのティースプーンですくうと、いつものもったりとした感じではなく、さらさら、とろとろと流れていきます。瓶の中へと、跡をつけずに戻っていくハチミツ。いつもと違う光景にドキドキしながらパンへとかけていきます。
   チーズがキラキラと光ったら、仕上げに黒胡椒を振って完成。
   ついに実食です。
   おそるおそるパンを口にもっていきます。
   目の覚める黒胡椒の匂いを感じながら、サクッ。
   あれ、チーズが強い? と思うと、包み込むように見守っていたハチミツがいました。サクッ。
   この塩気と甘味の相性の良さ。違和感なんて蚊帳の外です。サクッ。
   鼻に香る、かすかなハチミツの匂いも心地いい。サクッ。
   これは、最高だ。サクッ。
   お皿の上は、いつの間にか空っぽ。頭の中は、次にこれを食べる機会を探していました。
   この「チーズハチミツトースト」、今は私の特別な一時となっています。
   ハチミツの美味しさを気付かせてくれた知人に、感謝感謝。
(完)
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