ブリしゃぶ
「……革命や」
そう口にしたのは、蜂蜜と出逢った最初の私。
月日を遡り、今から五年ほど前の十二月のある日、砂糖を禁止された。
それは、大学のゼミでの話。更なる飛躍の為にあなたの好きなものを教えて下さい。と言われ、何かのご褒美を期待した愚かな私は、甘いものと答えた。そして……
「では、今この瞬間から砂糖を摂取することを止めなさい」
「……はい?」
この一言で、私は砂糖と暫しの別れを迎えた。
先生、いやここはあえて……師曰く、好きなものを断つことで、自らを律し、甘えている自分から脱却する。というありきたりな根性論を突き付けられ、砂糖には麻薬以上の中毒性がある事を伝えられた。
とはいえ、生きていく以上糖分は摂取しなければならない。
砂糖ではなく、果物などの天然な糖分は良いとされ、その日から砂糖のいない日常が始まった。
始めてみると、意外と苦なく過ごせていた。しかし、そんな余裕は直ぐに終わる。
あのイベントがやってきたのだ。そう……
『クリスマス』
結論から言えば、私はショートケーキのイチゴしか口に出来なかった。これが生き地獄に足を踏み入れた瞬間。
砂糖がダメなのでもちろんチョコレートは食べれない。つまり『バレンタイン』に貰ったチョコを食べれない(しかも本命からは貰えず……)。
友人の誕生日や、先輩の卒業記念のお祝いのケーキも食べれない。
溜まるストレス、抜ける髪の毛。
追いつめられ、果汁百パーセントのジュースで糖分を摂取していた私は、『ホワイトデー』のお返し作りの時に、遂に出逢った。
オーソドックスだがクッキーを作ろうとした私は、砂糖を使うと味見が出来ないと思い、冷蔵庫をあさる。
ふと手にしたのが――蜂蜜だったのだ。
今まで蜂蜜が出てこなかったのは、実は……蜂蜜が苦手だったからだ。
その前提があり見て見ぬふりを貫いてきたが、耐えられなかった。
無意識に指先に蜂蜜を垂らして舐める。
「……革命成功や」
(完)
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