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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつかりん

釛子ふたみ

 

 引っ越したばかりの緊張か妙に朝早く目覚めたので、トレーニングウェアに着替えて外に走り出た。都会とは言え日の出前の空気は清冽で、やっぱり出てきてよかったと思い、さっそうと足を動かす。
 休日ゆえに犬をつれた人やジョギング中の人に出会うが、すれちがっても目もあわせず、無論、挨拶などもってのほか。この町でうまくやっていけるかな、と不安になった時、ほのかな香りがおりてきた。
 「あ、かりん」
 枝の先についた大きな実がかすかな風に揺れている。
 「いい香り」
 思いっきり香りを吸い込んでいると、ドアが開いてその家の奥様らしい人が出てきたので、あわてて立ち去ろうとすると、
 「待って、かりん、あげるわよ」
 「え、あの」
 「たくさんあるから、待ってて」
 奥様は家に戻ると、既に袋につめてあったかりんを一袋持って出てらした。
 「はちみつかりんって知ってる?」
 「…いえ…」
 かりん酒は知っていたがはちみつかりんははじめて聞いた。
 「かりんをはちみつにつけるだけだから簡単よ。のどにとてもいいわよ」
 「のど弱いんです」
 のどは弱いがお酒も弱いので知ってはいてもかりん酒には手がでなかった。のどにいいはちみつかりんはとても魅力的だ。でも…図 々しすぎやしないだろうか。
 「じゃあ、つけてみて。風邪知らずよ」
 「ありがとうございます」
 袋いっぱいの香りをさしだされると、断れなかった。
 「ああ、いい香り」
 「見て、日が昇るわよ」
 奥様に言われた方角を見ると、ビルの上からオレンジ色の太陽が顔を出した。
 「わあ、きれい」
 二人で並んで日の出を眺め、もう一度かりんのお礼を言って、かりんの香りとともに家に帰った。
 その日のうちにはちみつとびんを買ってかりんをつけた。
 きっとこの冬は風邪しらずですごすだろう。
 なんだかとてもいいことがおこりそうな気がした。

 

(完)

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