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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

大人の贅沢

まい

 

 小さい頃、蜂蜜とメープルシロップの違いがよく分からなかった。今はさすがに理解している。ただ、蜂蜜とメープルシロップの違いが分かるからといって、それが子どもと大人とを分ける境界になるわけでもなし、蜂蜜とメープルシロップの違いは、単に事実として、私の中に存在しているだけである。私は依然として、子どものままである。
 これもまた小さい頃の話だ。虫が閉じ込められた琥珀を見た私はそれを、蜂蜜が虫を閉じ込めた宝石だと思い込んでいた。閉じ込められているのは、蜂蜜の甘い匂いに誘われた哀れな虫なのだと思っていた。それを聞いた私の親は、バカだなぁ、そんな訳ないだろう、みたいな事を私に言った気がする。その言葉に、私は密かに憤慨した。だって、誰も教えてくれなかったじゃない。琥珀が何でできているか、なぜ虫が閉じ込められているか、誰も教えてくれなかった!知らないことを馬鹿にするのはいつも大人だった。でも、琥珀を蜂蜜だと信じて疑わなかったのは私だ。結局は、私が子どもだったのだ。無性に琥珀を口に入れたくなった。舌で転がせば甘さを感じる気がした。もちろん、琥珀を口に入れることなんてしない。それが蜂蜜でないことは、もうとっくに知っているから。
 一人暮らしの冷蔵庫を開けると、そこにはいつもプレーンのヨーグルトが佇んでいる。プラスチックの容器に入った400gのやつ。私はそこから食べたい分だけのヨーグルトを、手頃なサイズの深皿に、どさどさっと移す。そして私は蜂蜜をかける。ぐるぐると渦巻きを描きながら、白い山に金色の線を垂らしていく。ヨーグルトにかける為だけの蜂蜜。稚拙な表現しかできないが、蜂蜜を口にする時、私はいつも宝石を食べる気分になる。多幸感と背徳感で胸がいっぱいになる。蜂蜜は、まだ大人に成り切れない私の、一つの贅沢なんだ。何も言わず、贅沢する私を許してほしい。

 

(完)

 

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