渡辺 碧水
二〇一九年十二月十七日、北海道新聞の「さっぽろ十区版」に「ビルで養蜂/健闘十年/さっぱちが感謝祭」が載った。
「さっぱち」とは「特定非営利活動(NPO)法人サッポロ ・ミツバチ ・プロジェクト」の通称である。
札幌市に住む幅広い年代と多様な職種の人たちが会員になり、都心のビルの屋上で蜜蜂を飼い、養蜂活動を通じて環境問題や食育、コミュニティー作りなどに取り組む団体。
記事は、創立十周年を迎え、会員一同が蜜蜂への感謝を込めて、神社で玉串拝礼を行い、一年の活動を締めくくったという内容だった。
会の歴史をさかのぼって調べてみると、興味深い経緯にたどり着いた。その一つは、カラスを追い払う用心棒として蜜蜂に注目したことである。
きっかけは、北海道庁赤レンガ庁舎前にある並木とその周辺を整備して、市民の憩いの場を作ろうとの企画だった。
だが、問題が指摘された。そびえる古木の並木をねぐらにしている多数のカラスの存在だ。広場を歩き回り、食べ物をあさるイメージも悪かったが、フン害もひどかった。
当時、企画の立案をマネージメントしていた会社の社員で、最初の段階からコーディネーターを務めていた青年がいた。現在「さっぱち」の理事長を務める酒井秀治氏である。
その酒井氏が二〇〇九年、論議の過程で「街中で蜜蜂を飼うのはどうだろう」と言い出した。提案は、カラス対策には蜜蜂の飼育が効果的との情報を得たからだった。
情報源は、ミツバチプロジェクトの先駆けとして知られる「銀座ミツバチプロジェクト(銀ぱち)」の活動を伝える新聞のコラム記事だったらしい。
二〇〇六年発足の「銀ぱち」は、東京銀座で約四十五メートルの高さのビル屋上に養蜂の巣箱を設置した。そこは周囲のビルに比べて少し高いため、以前は沢山のカラスが屋上で悠 々とたむろしていたが、蜜蜂を飼い始めると、意外なことに、そこでも、その周辺のビル屋上でもカラスがいなくなったそうだ。
実際に、付近を徘徊するカラスを蜜蜂が追いかける場面も目撃されるようになった。偶然の賜物だった。
【先達を訪ね養蜂を知る(二)へ続く】
(完)
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