骨人
「……はい、いいですかぁ?」
放課後。はちみつ色のやわらかな夕陽が差し込む教室で、一人の男子生徒が補講の居残り授業をしていた。
「蜂という字は、虫編に、なんか変なこの……、久の字みたいなやつに、横棒三つと縦棒一つでできています」
「…………」
「つまり、皆で助け合って生きていこうということなんです」
「いやおかしいだろ!」
男子生徒が声を荒げて立ち上がる。
「今の解説でどうしてそういう意味になるんだよ! っていうか、いい加減そのモノマネやめろ!」
しかし、先生は動じない。
「ああ、落ち着いて。そうは言ってもキミ、はちみつ好きだろう? だから私の蜂の授業受けたいんだろう?」
「補講の教科はただの生物だし、別に蜂そのものが好きなんじゃねえよ! 俺がハマってるのはマヌカハニーだ!」
「そうそう、喉にすっごく良いって評判だよね。そんなはちみつを作っちゃうなんて、すごいよね、マヌカバチは」
「作ってんのは普通のミツバチだよ! マヌカの木の花のはちみつってことだ!」
「おや、案外詳しいじゃないか」
男子生徒は叫びすぎて声が掠れ始めていた。息を整えると、かばんからマヌカキャンディーを一粒取り出した。
「今日はもう帰るからな! 彼女とデートする予定があるんだ」
「なるほど、マイハニーってわけね」
「やかましいわ!」
(完)
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