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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

甘い私

かきーしゃ

 

 マヌカハニーは若返りの薬。小さい頃の私は、そう信じて疑わなかった。
 私が小学生の頃だ。母と百貨店で買い物をしていたとき、あるお姉さんに呼び止められた。それはマヌカハニーを販売しているお姉さんだった。「よろしければ、一口どうぞ」そう言って、お姉さんは私とお母さんにスプーン一杯のマヌカハニーを笑顔で渡してきてくれた。お肌が透き通るくらいキレイで、ゼリーのようにプルプルした肌をしたお姉さんに私は思わず、魅入ってしまった。
 そして、恐る恐るマヌカハニーを口に入れると、濃厚で甘いけれど、ピリッとした味もして不思議な味がした。給食で出てくる蜂蜜よりずっと大人の味がして、当時の私は自分が何かいけないものを食べたような気分になった。肌のきれいなお姉さんは、毎日マヌカハニーを食べてると言っていた。お姉さんはこんな不思議な味のものを毎日食べてるのか!お姉さんは魔女のようにきれい。そうか、このマヌカハニーというものは、若返りの薬なんだ!と当時の私は本気で思った。
 お母さんは味が気に入ったらしく、一つ買って帰った。お母さんは、おいしそうに毎日一口ずつ食べていた。お母さんは、私に何度か勧めて来たが、私は絶対食べなかった。私が食べたら、赤ちゃんに戻ってしまうのでは、と心配して一口も食べなかった。
 20歳を超えた今もマヌカハニーを見つけると、小学生の自分が思い浮かんでくる。これを食べて、年が若返ったらどんなにいいものかと、小さい頃の自分に言い聞かせてやりたい気持ちになる。人生は、あまくない。あのマヌカハニーは人生の味で、子供の私には、わかるまいなんて思ったりする。

 

(完)

 

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