渡辺 碧水
二〇二〇年一月下旬、愛知県岡崎市にある文房具店で開催されたイベントで商品名「はちみついんく」がお披露目された。
字を書く万年筆のインクだが、透けたインクボトルや透明なペン軸を見ると、見た目は本物の蜂蜜が入っているかのようだ。また、ボトルの蓋を開けたときや万年筆のキャップを取ったときの香りも蜂蜜仕様になっている。
発売されたインクの色合いと香りの再現は「アカシア」「レンゲ」「ボダイジュ」の三種類。イベント前から紹介されたツイッターの写真を見ると、おいしそうな見た目の美しさは、確かに蜂蜜そっくりだ。しかも、蜂蜜の種類によって香りも異なる。
名古屋市を中心に愛知県で活動している、商品開発から事務まですべてを一人で行っている文具メーカー「尚貴堂」の大橋尚貴さんの熱意が実現したもの。「蜂蜜を万年筆に入れたら綺麗だろうな」という発想から出発し、インクブランド会社との共同開発によって、試行錯誤の末に誕生したこだわりの逸品だそうだ。
蜂蜜のようなインクとして命名された「はちみついんく」は、ツイッターで「きれい、おいしそう、かわいい」と話題になっていたが、完成品お披露目後も珍しいと話題が広がり、さらに注目を集めている。
商品の仕上がりは上 々で、万年筆のキャップを取るたびに広がる甘い香りで、書き手は文字を書くのが楽しくなり、発想豊かな文章が綴られ、素晴らしい作品が生まれるだろう。
新開発の製品は、インクの成分、書き心地、書かれた文字や絵の質など、まだ明確になっていない面もある。使用者の使い勝手を聞いてみなければならない。インクはまさにインクであって当然だが…。
そしてもう一つ、新開発には付き物だが、心配と危険が不安視される一面がある。
「もちろんインクなので食べられませんが、あまりに再現度が高く、知らないと間違える可能性もありますので、決して食卓に置かないでください」「言わなくても良いかなって思っていましたが、念のため言っておきます。食べられません!」と、大橋さんは注意を促す。
【蜂蜜(?)インクが登場(後)へ続く】
(完)
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