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蜂蜜エッセイ応募作品

熱殺蜂球参加蜂の余命(後)

渡辺 碧水

 

 【熱殺蜂球参加蜂の余命(前)から続く】
 必殺技の熱殺蜂球形成には、成虫後十五日以上経過した働き蜂が担当する。約四百匹が一斉にオオスズメバチを取り囲み、胸の筋肉を震わせて発熱し蒸し殺す。蜂球は約三十分間維持されるが、内部の温度は四十六度以上に達する。
 普段三十二度程度の巣中で生活している蜜蜂にとっても、高温は自身の身体に大きく無理のかかる状態。熱殺蜂球に参加した個体は短命化し、余命は四分の一程度にまで短縮されてしまう損失を伴うという。
 発熱を防衛に利用する以上、蜜蜂側の余命短縮は避けられない。この点は容易に理解できる。
 だが、「短命化したミツバチが以降の蜂球形成の機会に蜂球の中心付近に集まりやすくなること」については、容易に納得できない。
 形成するだけで、一度に約四百匹もの働き蜂が短命化してしまう熱殺蜂球は、対オオスズメバチの「必殺技」であるとともに、蜜蜂側にも貴重な労働力の短命化という大きな損失をもたらす。「諸刃の剣」と言える。
 その一方で、一度蜂球に参加した個体が次の機会にはより危険な場所に参加することは、こうした損失の軽減につながっていると考えられる。これにより、初参加個体の余命短縮が回避され、より多くの働き蜂を残すことが可能になる。
 研究者たちの考察によれば、これは「熱殺蜂球」というスズメバチに対する防衛の代償としての短命化に対する「集団(コロニー)レベル」の見事なフォローアップと言え、コロニー全体が「超個体」として機能していることを示す。
 熱殺蜂球を形成するためには、スズメバチや仲間の蜜蜂からの匂い情報が重要であるため、匂いの感受性が高まるような脳内の変化が生じ、より積極的に熱殺蜂球に参加するようになるのかもしれない。
 一方で、様 々な動物でストレスがかかると攻撃的になることが知られており、蜂球内の高温ストレスで短命化した蜜蜂が外敵全般に対して攻撃的になっている可能性も考えられる。
 今後は、蜜蜂の体内で生じている遺伝子やタンパク質といった分子レベルの変化の解析や、短命化と以降の蜂球へ参加しやすくなる仕組みについての研究が期待される。

 

(完)

 

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