渡辺 碧水
【再生農地で蜜源確保(一)から続く】
前の(一)で挙げた二つの重要な点について述べておきたい。
一つ目の「授粉作業を蜜蜂に頼る必要性」は、おいしさを引き立てる形の整った良質のイチゴを生産するため、奇形果防止は蜜蜂の特技だから。
イチゴハウスで蜜蜂は、花から花へ飛び回り、おしべとめしべに体を擦り付けながら蜜を吸う。花の上で、口で蜜を吸い、体毛で花粉を集めながら、くるくると回る。体毛に集まったおしべの花粉がめしべに付いてうまく授粉が成功する。
一つの花には、蜜蜂が十回以上も繰り返し蜜を吸いに訪れることで、形のきれいなイチゴとなる。訪花が少なくても多すぎても、奇形果になる率が高くなる。
赤く熟した実の表面には小さな種がたくさんある。一つ一つの種がきちんと受粉できていないと、いびつな形になり、味は同じでも売り物にならない。
狭いハウス栽培で人手が十分にあったとしても、人工授粉では形の整った販売イチゴ作りは難しい。
二つ目の「蜜蜂の蜜源を他の植物にも求める必要性」は、イチゴの花が蜜も花粉もとても少ないから。より多くの時間、働く必要がある。
ハウス栽培は秋から春にかけての寒い時期に行われる。十一月~翌春五月、温度差の激しいハウスの中で、蜜蜂は働き続けなければならない。
花蜜と花粉を集めたい蜜蜂にとって、かなりの過酷労働になる。幾日も同じハウス内で、花蜜も花粉も少ない花の中を飛び続けることになれば、蜜蜂だってストレスが溜まることもあろう。
シーズンが終わるころには、激しい消耗で蜜蜂は疲れ切って、子孫や後継蜂をあまり残さず、そのまま死滅しまうことも多いという。イチゴの花だけなら、餌不足ばかりか、栄養が偏り、免疫力だって低下してしまう。これも死滅する要因になるだろう。
栄養面に配慮した他の餌も工夫して与えることが、飼養農家の課題である。蜜蜂が元気で働き続けること、寿命が長くなること、これも生産性を高めるのに欠かせない。
イチゴ農家が毎年、レンタルなどで消耗品のように蜜蜂を導入してきた理由も想像できる。同時にまた、自前で蜜蜂を飼い、活用することも、決して容易でないことが理解できる。
【再生農地で蜜源確保(三)へ続く】
(完)
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