渡辺 碧水
【蜜蜂を補完するハエ登場(二)から続く】
世界の温帯や亜熱帯に広く分布し、日本でも全国、特に海岸近くに多く生息している。自然界では、幼虫(ウジ虫)は動物死体などを餌に育つ。
主な特長は次のとおりである。
一、活動温度の幅が広い(蜜蜂が十五~二十五度であるのに対して、ビーフライは十~三十五度)。
二、活動に紫外線を必要としない(蜜蜂は必要)。
三、冬季に日照不足で蜜蜂が活動しにくい地域の栽培施設内でも訪花する。
四、蜜だけを餌とし、軽量のため、訪花の際に花を傷つけない。
五、奇形果実が発生しやすい品種では、ビーフライだけを施設に放飼することで、奇形の発生を抑制できる。
六、蜜蜂の活動が悪い、活動が制限される施設内でも利用できる。
七、毒針がないので、刺される心配がない。イチゴ狩りなど観光農園での活用も可能。
八、利用の自由度が高く、必要な時期に短期間利用も可能である。
もちろん、導入上の弱点や限界もある。
一、成虫の平均寿命は約二週間。授粉効果を継続させるためには、七~十日ごとに新しい幼虫を継続して導入する必要がある。
二、三アール程度のハウスであれば、蜂と同等のコストで利用できるが、蜜蜂導入と同等以上の経費や手間がかかる場合がある。
三、施設内の温度が適温を超えると幼虫は死亡し、低過ぎると羽化が遅れる。
四、蜜蜂には影響のない農薬でも、影響を受けることがある。
五、果実の残りや動物の死骸などがあると、それに群がり、訪花しにくくなる。
このようにして、蜜蜂の供給不足を補い、価格の高騰を避け、蜜蜂のストレスを回避させ、イチゴ農家などの安定的生産性や生産物品質の向上につながることが期待できる。
消費者も手ごろな値段でおいしい果物が食べ続けられれば、良いこと尽くめとなる。
誰もが想像するだけで「気持ち悪い!」と感じるウジ虫だって救世主(?)になり得る。危機的状況に陥った二〇〇九年に続き、自然災害に襲われた二〇一九年も、結果として「窮すれは通ず」となったことだろう。
ふと、「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」という聖書の言葉を思い出した。
(完)
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