ジョン
僕達がこの家に引っ越してきて初めて口にしたものは蜂蜜がたっぷりかかったヨーグルトだった。まだ冷蔵庫に何もなくて、コンビニで買ったヨーグルトに、僕の前の家から持ってきた蜂蜜をかけて、テレビもない殺風景な部屋で二人で食べたのを覚えている。
彼女はもともと朝ごはんを食べずに仕事に行く人間だったが、それからはというものの必ず蜂蜜のかかったヨーグルトを食べてから、「いってきます」と言って僕にキスをしてから社会の小さなパーツの1つに変身した。
前から朝ご飯を食べて欲しいと思っていた僕にとっては、ヨーグルト一杯とはいえとてもホッとした気持ちになった。
そんな同棲生活のスタートから3年が経ち、いろんなことを二人で乗り越えて、今僕達は夫婦になった。現在妻は必ず朝のワイドショーを見ながらあの時と同じ蜂蜜のたっぷりかかったヨーグルトとトーストを食べるようになった。
もう最近は同棲したての頃みたいにキスをしてから仕事に出かけたりはしなくなってしまったが、妻が朝ご飯食べているのを見ている時だけは、あの頃の新鮮な気持ちをちょっぴり思い出しては密かに歓んでいる。
そんなささやかな光景がこれからもあるだけで、僕は妻をずっと好きでい続けることが出来るのだろう。
(完)
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