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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつの思い出

万代 千香子

 

 はちみつと言えば、こんなことをよく思い出す。まだ子供の頃風邪を引いて熱を出したときのことである。祖母は私の為にたくさんの果物を食べやすいように細かく切って、ヨーグルトの中にはちみつと一緒に入れて混ぜ合わせたものをよく作ってくれていた。ヨーグルトの中のいちごやバナナにたっぷりのはちみつがよく絡んで、とても美味しいのである。隠れてこっそりとはちみつを出してきては入れ足していた。幼い頃の私にとってのそれは、風邪を引くたびの「ちょっとした楽しみ」となっていた。
 今、祖母はいない。はちみつを食べるたびにその優しい甘さや独特の香りを感じると同時にああ、あんなこともあったなと思い出す。いつも以上に優しいおばあちゃん。風邪を引いた時だけ食べられる特別なデザート。年月が経ってすっかり心も身体も大人になった今、楽しい嬉しいと感じることは変わっていった。欲ばかりが増えて「幸せの定義」は確実に変わってしまった。日常の小さな小さな喜びに幸せを見出せなくなってしまったのだろう。
 おばあちゃんも、はちみつヨーグルトを楽しみにしている自分ももういないけれど、そんな時代を懐かしみながら間違いなくあの時の自分は幸せだったと言えるだろう。

 

(完)

 

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