弓削萌依
日曜日の朝食は、パンとスープで決まっていた。私は、表面をカリッと焼いた焼きたてのパンにバターを塗って、そこに黄金色のドロっとしたはちみつを塗って食べるのがお気に入りだった。そして、必ず、はちみつをとったスプーンを洗剤で洗う前に、きれいに舐めて流しに持っていくのだ。濃厚な甘さが口いっぱいに広がった瞬間は何物にも代えがたい幸福だった。母は、「このスプーン一杯は蜜蜂の一生分だから大切に食べなさい」とよく言っていた。
寒い受験期、母は頑張る私に、はちみつ入りの熱 々の紅茶を私に作ってくれた。ほんのり甘くて、芯から温められた。母の優しさがこもっていて、私を支えてくれていた。
幼少期、風邪をひいて咳が止まらなかったとき、母は私の熱を測りながらはちみつをスプーン一杯口に運んでくれた。「はちみつ食べると早く治るから」そういって食べさせてくれた。
はちみつ。上京してスーパーで見かける度に思い出すのは、はちみつを食べて笑みがこぼれる私と母の優しさである。はちみつの自然な甘さは、母の優しさであり、愛情であった。
(完)
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