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蜂蜜エッセイ応募作品

蜜蜂は無駄な労力を使わない

渡辺 碧水

 

 農作物の生育にとって弊害をもたらす状況の一つに、いわゆる「低温寡照(低温寡日照)」という気象条件がある。天候や季節、地域によって、太陽の照射が少ないこと(日照不足)から気温も上昇しないことをいう。
 働き者の蜜蜂も、夜間もそうだが、このような気候状況の下では活発に活動しない。特に、曇天の時は働きが鈍くなる。蜜蜂は、太陽の位置を確認して方向を定めており、活動する温度の幅が十五~二十五度だからである。
 それでも、蜜蜂の訪花を待つ真冬の寒咲き花もあるので、西洋蜜蜂よりも寒さに強い日本蜜蜂は、陽射しの暖かい午後などには花蜜集めに巣箱から出かけるそうだ。
 園芸農家の施設園芸作物(ハウス栽培、特にイチゴ栽培)で交配用花粉媒介(授粉)昆虫として大きな役割を期待されている蜜蜂ではあるが、冬季の低温寡照地域では、活動が鈍り、期待されるような授粉効果を上げられない。厳寒期の低温と紫外線不足で、蜜蜂の活動が鈍化することは、授粉不良による奇形果実を発生させる。
 このことは、一面、蜜蜂利用の限界や弱点ともみなされ、また、最近の自然災害などによって深刻化する蜜蜂の供給不足に伴う購入 ・借入価格の上昇と相まって、蜜蜂の働きを代替し補完するヒロズキンバエなどを導入する農家の意識変革にもつながっている。
 二〇二〇年一月十日、環境昆虫学の学者岩佐光啓氏は、近年の混迷する人間社会の方向感覚について、コラムに玉稿を寄せている。哲学者鷲田清一氏の最近の著書『濃霧の中の方向感覚』にちなみ、題は「濃霧見通す方向感覚」(北海道新聞「魚眼図」)。
 その中で岩佐氏は「ミツバチは、太陽の位置を確認して方向を定めるため、曇天の日はその方向感覚が失われる。そんな視界不良の時、ミツバチは活動をせず、無駄なエネルギーを使わない」「ミツバチは問題に直面すると危険を回避し、子孫に負の遺産を残さない」と紹介している。
 人間には限界や弱点とみなされる習性も、人類よりも三百五十万年も前から生存する蜜蜂には理に適った行動であって、無理や無駄やムラを繰り返し、方向感覚が定まらない人間の思惑には左右されないのだ、と見るべきなのであろう。

 

(完)

 

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