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蜂蜜エッセイ応募作品

祖母の思い出

橘高子

 

 蜂蜜と聞いて思い出すのは一緒に暮らしていた大好きな祖母のこと。祖母は毎朝、ヨーグルトにびっくりするくらいたっぷり蜂蜜をかけて食べていました。私も祖母の横に座って一緒に食べたものです。
 祖母が80歳を過ぎた頃から、だんだんと祖母の兄弟や周りの友人が亡くなった、という知らせが増えてきました。その知らせを聞くたび、お葬式にいくたび、祖母は寂しそうに「友達がだんだん減っていって生きていてもつまらないよ。私も早くあっちに行きたいねぇ」と言っていました。今なら「そんなこと言わないでもっと長生きしてほしい」と言えたでしょうに、子どもだった私は上手に気持ちを伝えられず、何も言えなかったことが悔やまれます。
 ある日テレビを見ていると、寿命が非常に長い国がヨーロッパにあり、どうやらある食材が関係しているらしい、という番組をやっていました。何十年以上も前の話なので、なんの番組かは忘れてしまいましたが、そこで紹介されていた食材とはトマトとヨーグルト、そして蜂蜜だったのです。子ども心に「おばあちゃんが早く死んでしまったらどうしよう」と不安に思っていた私は、その番組を見て「おばあちゃんはこれからもずっと長生きしてくれる!」と確信し、なんだかとても嬉しく感じたのを覚えています
 祖母のヨーグルトに蜂蜜の習慣はそれからもずっと続き、数年前98歳の大往生で亡くなりました。蜂蜜を見ると祖母のやさしさと笑顔を思い出し、無性にヨーグルトに蜂蜜をたっぷりかけて食べたくなるのです。

 

(完)

 

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