渡辺 碧水
二〇一九年十二月二十四日、クリスマス前日、NHK総合の「おはよう日本」で「イチゴ栽培の危機!蜜蜂不足」が話題となった。
これを契機に「これまで日本国全体として、政府として、この問題をどう認識し、どんな対策を講じてきたか」を、近年の政府資料から探ってみた。
それを整理し、本欄に「蜜蜂不足の国家的認識と対策(一~六)」を寄稿した。
農作物の花粉交配(授粉)用蜜蜂不足が問題化し、農水産省が解決に乗り出すほどの大きな課題となったのが二〇〇九年春だった。
資料収集過程で出合い、投稿に記載できなかった資料の一つを紹介しておきたいと思う。
それは、二〇〇九年十月開催の同年度日本地理学会秋季学術大会で発表された「なぜミツバチ不足は生じたのか?―養蜂業におけるなわばり問題からの考察―」(発表者:北海道大学大学院、柚洞一央、『日本地理学会発表要旨集』七十六号、「抄録」百三十頁)である。
要旨の抄録から要点を抜粋する。
花粉交配用蜜蜂が不足する直接的主因として、多数の養蜂業者が指摘するのは、農薬による大量死、寄生ダニの蔓延、海外からの女王蜂輸入禁止の影響である。しかし、各地での聞き取り調査では、養蜂業界が抱える根本的な問題が少なからず影響している印象がある。
そこで、本研究では、養蜂業における資源配分の問題を通して、蜜蜂不足をもたらした養蜂業界内部の問題を指摘する。
蜜蜂飼育の養蜂業では、花蜜資源を求めて、日本では南北に長い地理的特徴を生かして、移動養蜂が行われてきた。ここで、花蜜資源の利用権を誰に与えるのかが問題となる。
資源利用の特徴は蜜蜂が飛行する点にある。蜜蜂の飛行範囲は半径二~四キロと広範囲に及び、利用している花蜜資源を明確にすることは困難。そのため、利用権をめぐる争いは、巣箱設置の土地所有者と養蜂業者との間ではなく、隣接して巣箱を設置する養蜂業者同士でなされてきた。つまり、養蜂業者は国土空間に独自の利用権「蜂場権」を制定している。この事情が花蜜資源の配分をより複雑にしている。
【蜜蜂不足原因の一考察(後)へ続く】
(完)
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