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蜂蜜エッセイ応募作品

冷たい蜂蜜

米村雪乃

 

 衛生的にどうなのかはわからない。しかし私と蜂蜜との思い出の中で最も鮮明なのは雪にかけた蜂蜜だろう。
 私の祖父母のうちは石川県にある。年末年始は家族皆で石川に遊びに行っていた。石川は、冬には雪がたくさん降る。私の家は東京であるため、雪は珍しく、特に幼いころは雪を見ると心が躍った。祖父母は庭の雪をいつも新雪のままにしておいてくれた。私と弟が好きに遊べるようにしていてくれたのだ。あたり一面に広がる銀世界は、美しく、鋭く、そして柔らかかった。
 ほわほわの雪に目を輝かせていると、父が蜂蜜とガラスの器を持ってきた。何に使うのかと思うと、いきなり真っ白に輝く目の前の雪をすくってガラスの器に入れたのだった。おままごとでもするのかと思ったら、父は雪に金色の蜂蜜をたらりとかけた。私が目を丸くしていると、「食べてみな」と渡してきた。一口食べると、ひんやりとした雪にしっかりと甘い蜂蜜がまじりあって、びっくりするほどおいしかった。私はあわてて弟を呼んで食べさせた。弟も目を見開いて喜んだ。私と弟はもっと食べようと、きれいなきれいな雪をさらにすくった。そして蜂蜜をかける。蜂蜜は粘度が高いから雪とは混ざらない。蜂蜜の周りだけ雪が固まって、蛇のような形になる。この見た目も好きだった。私はしぜんのものを組み合わせたこの食べ物に特別感を覚え、得も言われぬそのおいしさのとりこになった。
 今では弟は反抗期だし、石川ももうあまり雪が降らなくなってしまった。その後の人生で、おいしい蜂蜜の食べ方をたくさん知った。雪に蜂蜜をかけただけ。今考えたら汚いだろう。なのに、あの味だけは忘れられない。最もおいしかった蜂蜜としか思えない。
 ひんやりと冷えた白雪の中、口でとろけたあの蜂蜜。

 

(完)

 

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