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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜の風

森田 彬光(もりた あきみつ)

 

 小学生の頃、クラスに好きな女の子がいました。彼女が私の近くの席になったことがありました。でも、内気な私は彼女に中 々話しかけることができません。そんな時、私にとって給食の時間は何よりも幸せな時間でした。それは、席替えによって私たちが同じ班になれたからです。給食の時間は、もちろん他の班員を交えながらではありますが、彼女と向かいあって話すことができる、ほとんど唯一の時間でした。
 ある日のことです。午前中の授業が終わり、待ちに待った給食の時間がやってきました。今日はご飯ではなくパンのようです。各班の机の上に蜂蜜が配られました。やがて、先生の「いたただきます」の声で皆パンに蜂蜜を塗り頬張り始めました。少しして先生が、「今日は〇〇さんがお休みなので、蜂蜜がもう一つあります。欲しい人は、じゃんけんです」と言いました。私は心の中で、「よし!」と思いました。それは、私が蜂蜜好きだったからではありません。班の給食中の会話から、彼女もまた蜂蜜好きであることを私は知っていました。私は、彼女のために蜂蜜を勝ち取ろうと奮起したのです。手を挙げた3人でじゃんけんが始まりました。アイコが何度か続きます。しかし、ようやく決着がつきました。なんと、運良く私は蜂蜜じゃんけんに勝ったのです。ところが、喜んだのもつかの間、私はがっかりしてしまいました。席に戻ると、彼女はもうパンを食べ終えていたのです。せっかく蜂蜜を手にしたのに、彼女にはあげられない。悔しいやら悲しいやらで、私はなんだか泣きたいような気持ちになりました。
 私は今でもその時のことを時 々思い出します。しかし、それは決して悲しい残念な記憶ではありません。むしろ清 々しい気持ちがするのです。思えば、蜂蜜じゃんけんは、私が誰かのためにと戦った最初の記憶なのです。私は蜂蜜を味わいながらいつも思います。まろやかなコクの中に、すーっと心地いい風が吹いていることを。

 

(完)

 

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