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蜂蜜エッセイ応募作品

ぬくもり

シロイルカ

 

 「はい。ここ置いとくね。」そう言って、母は私の机の上に飲みやすいように蜂蜜で甘くさせたカモミールティーを置いた。私は「ありがと」と視線をノートに落としたまま呟いた。パタンとドアが優しく閉まり、その風に乗ってカモミールの優しい匂いが部屋中に充満する。私はこの冬大好きになったその香りを胸いっぱいに吸い込みその香りを味わうかのように深呼吸をした。『切りがいいところまで終わらせる。そしたら大好きな時間にしよう。』そう心に決め、私はペンのスピードを速めた。
 2018年の1月。私は二度目の大学受験を目前に、不安に駆られていた。母がカモミールティーを作ってくれるようになったのも私の不安を少しでもぬぐってくれるためだったと私は今になって思う。正直第一志望があきらめきれず浪人を決めた私だったが、自信は一ミリもなかった。試験が近づくにつれ母に当たってしまうことも多くなり、そんな自分にも嫌気がさしていた。
 2018年の2月下旬。試験がすべて終わり徐 々に合否が出ていく中、私は思い通りにいかない結果の連続に引きこもり状態になっていた。そんな中でも母は私にカモミールティーを作ってくれた。いつもより苦く感じるカモミールティー。私を見つめる母の目がつらかった。
 そして3月。滑り止めの大学の合格通知が来た時、私以上に誰よりも喜んでいたのは母だった。泣きながら私に電話をしてきた母の声を私は一生忘れない。私を支えてくれていたのは塾の友達でも、先生でもなく、一番近くにいてくれた母なんだとやっと気づけた瞬間だった。
 大学生になった今、私の家の台所には今も変わらずに蜂蜜の瓶とパックのカモミールティーが仲良く隣り合って並んでいる。母の作るカモミールティー。それは蜂蜜がたっぷりと入っていて、お湯の温かさだけでないぬくもりと暖かさをまとっていた。私が作るカモミールティーはどうだろう。私は2つのカップを用意し、やかんに火をかけた。

 

(完)

 

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