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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

美味しくて、つい

平平凡人

 

 孫たちが毎朝、食パンに蜂蜜をたっぷり塗って美味しそうに食べている。78歳になる私もいつの間にか朝はパン食に慣らされて、蜂蜜が手放せなくなっている。私はこの蜂蜜を見るたびに思い出すシーンがある。まだ5歳の戦後の食べ物に苦労していた時代のことである。おやつといえば、さつま芋を蒸かしたものしかなく、明けても暮れても芋ばかり。そんなある日のこと。母が進駐軍に勤める近所の方から、小さなガラス瓶に入った蜂蜜を貰ってきた。それを食器棚に入れて母は外出していた。夜になったら妹と一緒に食べさせてやるよと言われていた。私はその小瓶が気にかかり、こっそりと取り出して指を突っ込み蜂蜜をすくい取ってなめてみた。蜂蜜なんて食べたことがなかった私は、「なんて美味しいんだろう!」と感動し、ついつい手が止まらなくなり、気が付いたら小瓶の中は半分なくなっていた。その時になって、大変なことをしたということに気が付き、母に叱られるのが怖くてどうしようもなかった。やがて母が帰宅して小瓶に目が行き、「誰が食べたのかな?」と言って私の顔を覗き込んだ。私は「知らないよ」と言ったが、口の周りに蜂蜜が付いており、母は犯人が私だと分かっていた。雷が落ちるかと思いきや、母はニッコリと笑いながら「正直に言わなきゃだめよ。人は素直になることがいちばん大切なのよ」と言っただけだった。当時は、甘い物に飢えていた時代だった。母はそのことを思い、私を叱らなかったのだろうとかなり後になって分かった。優しかった母はもうこの世にいないが、蜂蜜を見るたびに母の顔が浮かんでくる。今や飽食の時代。食べ残しても何とも思わない贅沢な時代だ。孫たちにこの話を聞かせて、食べ物を大切にし、感謝の心を忘れないようにと言い聞かせたものだったが、さてどこまで理解できているだろうか。

 

(完)

 

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