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蜂蜜エッセイ応募作品

魔法のように蜂蜜を使う母

かあかあ

 

 とろりと輝く蜂蜜が、お茶に溶けていく。熱でぼーっとしながら、眺めていた。子どもの頃、母が飲ませてくれた蜂蜜茶は、風邪の特効薬のようだった。実家にはいつも、大きな蜂蜜の瓶があった。
 一人暮らしを始めた私には、蜂蜜を常備する余裕がなかったけど、幸いに風邪を引くこともなかった。結婚して二人暮らしになり、赤ちゃんを授かっても、そうだった。
 久しぶりに風邪を引いたのは、溜まった疲れが、ほっとして出てしまったせいもあるのかもしれない。実家で、やっぱり母が蜂蜜茶を出してくれた。「この子も1歳を過ぎたんだから、ヨーグルトに入れるわよ」と、息子の世話を引き受けて、蜂蜜デビューもさせてくれた母。「蜂蜜はね、色 々と良いのよ」と。荒れた唇にも、寝る前に虫歯を作らずに喉を潤すにも、何より美味しい食べ物として、蜂蜜を愛用している。
 次に私が実家を出るときが、いつで何人暮らしになるのか、今は見当もつかない。母も永遠に元気でいてくれることも出来ないし。でも今度は私が、蜂蜜の甘い香りが漂う家庭で、この子を育てていくんだ。

 

(完)

 

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