渡辺 碧水
二〇一九年十一月、科学技術の最新情報を伝える『GIZMODO』は「スーパーミツバチを作る!」というニュースを掲載した。
相変わらず、蜜蜂の絶滅危機が続いている。植物の花粉交配を担う蜜蜂の急激な減少で、生態系や食物網に影響が及んでいる。
米国の話だが、二〇一八年も、四十 %もの養蜂群が消滅してしまったとか。農業は大きな痛手を受け、蜜蜂媒介に頼る穀物生産は二百億ドルもの損失が出ているという。
危機を乗り切るために、個体数が減るのなら、各個体の生命力を強くすることも一つの有効な方法である。
伝えられた情報によると、個体の免疫組織を高め、低い気温でも飛べるように持久力を増大させる方途が考え出された。蜜蜂に栄養剤を与えるもので、アルゼンチンの企業が開発した。
一般的に、悪天候や低気温の間、蜜蜂の活動は低下する。そこで、健康的で強い免疫力を持ったスーパー個体にして、もっと効率的にどんどん働いてもらおうというわけである。
栄養剤は農家の希望する作物に蜜蜂が惹きつけられるように調合してあって、週に一回、その栄養剤を蜜蜂の巣に餌として流し込む方式で与えられる。特定の対象作物に受粉するように教え込むこともできる。
アルゼンチンでの試行では、アーモンド、リンゴ、ブルーベリー、キウイの収穫高が九十 %もアップしたという。米国のブルーベリー農園の実施では、収穫高は二十五 %アップし、ベリー自体の大きさも二十二 %増えた。
栄養剤投与が各国で採用され、好結果を生めば、農業経営が大きく救済される可能性はある。
しかし、今後も蜜蜂群減少の状況が数多く発生するのであれば、スーパーミツバチを作っても、結局は対応し切れなくなってしまうのではなかろうか。
二〇〇七年に始まった「蜂群崩壊症候群(CCD)」現象の究明と対策は、これまでもいろいろとなされてきた。その経過を知っておくことも大切であろう。
(完)
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