渡辺 碧水
『聖書』には「蜂蜜(蜂の巣の滴り)、蜜、野蜜」などという言葉が数多く出てくる。
日本聖書協会発行の『聖書、新共同訳』によると、「蜂蜜」は旧約に九か所、「蜜」は旧約に四十八所と新約に二か所、「野蜜」は旧約に一か所と新約に二か所(箇所数は[雜賀信行「八月三日は何の日」クリスチャンプレス、二〇一九年八月三日]による)。ほかにも、これらを指している表現がある。
「野蜜」とは野生蜜蜂の蜜のことであるが、エジプトから移り住んだ時から「約束の地、カナン」では、人の手による養蜂はほとんど行われていなかったものと、長い間、理解されていた。
だから、「蜜」の語は、蜂蜜よりも、ナツメヤシやイチジク、ブドウなどを煮詰めて作った甘い糖蜜(果蜜、シロップ)を指すとの見方が主流であった。
私は二回、二〇一一年三月と一四年三月、イスラエルの聖地旅行ツアーに参加した。その時に聞いた話では、古代の養蜂場跡を実際に発掘し得たのは、最初の訪問時のわずか四年前だった。
当時のAFPによると、二〇〇七年九月上旬、ヘブライ大学の考古学者は「イスラエル北部のベト ・シェアン渓谷のテル ・レホブ遺跡で聖書時代の前十~九世紀の養蜂場を発見した」と発表した。
現場で発掘された三列に並んだ百個ほどの円筒形のミツバチの巣箱は、紀元前十世紀ごろのソロモン王時代のものと判断された。学者たちは、ここだけでも年間〇 ・五トンの蜜の採取と蜜蝋の活用がなされていた、とみている。
中東地域で蜜蜂の巣箱集積場が発見されたのは、これが初めてで、今のところ最古の養蜂場とみなされている。
このようなわけで、聖書中の「蜜」という語は蜂蜜を指している、との見方も増えているようだ。
なお、仏教や神道と蜂蜜との関係については、情報を集めた結果、これと言った関係は見つかっていない、とされる。(坂本文夫「ハチ博士のミツバチコラム」三十一、中京しんぶん、二〇一五年二月号)
(完)
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