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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

おばあちゃんとはちみつ

S ・N

 

 上京して一人暮らし。
 家族のもとを離れてせいせい!もつかの間、自分のほかに人の気配がしない部屋はさびしい。風邪をひいた時なんか特に。
 風邪をひくと思い出すのはおばあちゃんのプロポリス。実家で一緒に住んでいたおばあちゃんに風邪をひいたと訴えるとプロポリスを一滴のどに垂らしてくれるのが常だった。「にがいよ!」と嫌がるわたしに「効く薬は苦いとよ」とおばあちゃん。
 “風邪をひいたらプロポリス”はいつの間にかわたしの定式になった。

 おばあちゃんのはちみつ健康法は他にもあった。寝る前にローヤルゼリーをのむことだ。布団に入るまえ冷蔵庫を開けてローヤルゼリーをひと口たべるのがおばあちゃんの習慣だった。寝る前にものを食べちゃいけないと母に言われていたわたしはそれがうらやましくて「うちにもちょうだい!」とせがんでいた。
東京に出てきてまもなく、実家から送られてきた荷物の中にローヤルゼリーの瓶が一つ入っていた。瓶に張り付けられたメモにはおばあちゃんの字で「ケンコウがイチバンです」。

 わたしとおばあちゃんは雨が降る日の午後によくお茶をした。クリームをいれたコーヒーがおばあちゃんの定番、はちみつをいれたココアがわたしの定番だった。図書館で借りたおもしろい本のこと、週に一度のピアノのレッスンがおっくうなこと、晴れたら新しい靴を履いてどこに出掛けるか、今日のばんごはんは何がいいか。ティーカップの上で脈絡のないおしゃべりをして、わたしがカップの底に残ったはちみつをマドラーですくい取るのを合図にさてと立ち上がる。

 はちみつのことを考えながらこの文章を書いていたら巣蜜が食べたくなった。一人暮らしをはじめてからめっきり食べなくなってしまった。巣に入ったままのはちみつがあることを知ったのはおばあちゃんが食べさせてくれたから。さいごに口の中に残る蜜蝋をガムみたいだといつまでも噛んでいたのを思い出す。

 このつぎ実家に帰ったときには巣蜜を食べさせてもらおう。はちみつをいれたココアを飲みながらおばあちゃんとおしゃべりをしよう。何の話をしようか。風邪の夜を一人で乗り切ったこと、ローヤルゼリーをよく飲み忘れてしまうこと、換気をせずにさかなを焼いてしまったこと、近所にあるカフェの椅子が高すぎること、花が咲き始めたベランダのパンジーのこと…

 

(完)

 

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