渡辺 碧水
【蜜蜂は絶滅するか(前)から続く】
前稿では、世界的ベストセラー小説『蜜蜂』を話題の中心に、環境の悪化を問題視し、地球上での蜜蜂の危機について触れた。
蜜蜂の絶滅によって、人類の食料生産は危機的事態に追い込まれ、人類の滅亡にもなりかねない。この見解には、蜜蜂の絶滅が人類の滅亡よりも先に起こり、蜜蜂による授粉の代替手段がほとんどない、という前提がある。
まず、蜜蜂の絶滅が人類の滅亡よりも先に起こるかどうかを確かめる必要がある。専門家の意見を聞くのが手っ取り早いだろう。
雑誌『ヘルシスト』二百十七号(二〇一三年一月発行)の特集「ミツバチ大研究」の中に、玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センターの中村純教授の見解があった。「ミツバチが絶滅する?という噂の真相」という記述を、筆者(渡辺)の言葉で要約してみた。
蜜蜂の絶滅が人類の滅亡よりも先に起こることはまずない。根拠は、人類が存在しない五百万年前から今のスタイルで地球上に存在し、想像を絶する環境変化を克服してきたタフな生物だから。人間はそれを超越する環境変化を生み出していない。
蜜蜂は南極大陸以外の世界を制覇してきた。つまり、環境適応能力が非常に高い。
北半球では、確かに家畜化された西洋蜜蜂は減少している。最大の原因は人間が養蜂をやめたから。だが、FAOの統計では、世界の養蜂蜜蜂は逆に増えている。南半球で増えているから。
日本では、一九八〇年代と比較すると、養蜂蜜蜂数が半減しているが、同時に養蜂家数も半分ほどに減っている。ただ、養蜂をやめた理由は、単に輸入蜂蜜が安価だという経済原則だけでなく、やはり養蜂環境の条件悪化を第一にあげる必要があろう。
タフなはずの蜜蜂が減っているのであれば、考え直すべき時期かもしれない。
話題の小説『蜜蜂』でも、絶滅したはずの蜜蜂が実はまた再生され得る、というのが大きな主題になっている。進化の過程で様 々な環境の変化を乗り越えてきたように、蜜蜂はまた生き延びていた。
(完)
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