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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂達が教えてくれたこと

夏田優希

 

 蜂は気の毒だ。そう思ったのは8年程前から、同居する祖母が蜂を育て始めてからだ。山 々に囲まれた我が家の庭の隅に置かれた木箱。最初は全く興味がなかった。もちろん、蜂に対しても無関心。蜂蜜はどれでも一緒。そう思っていた。あの日まで。
 蜂は気の毒、と思ったのは祖母の蜂蜜ができた時。一緒に食べよう、と祖母に誘われ台所へ行くと、青いバケツの上にステンレス製のざる。そのざるの中には穴だらけの塊。穴をよく見ると白い突起物があちこちに見えた。これが蜂の巣。初めて見る蜂の要塞にとても驚いた。そしてそれ以上に驚いたのはその味だった。とにかく濃い。様 々な花の味をぎゅっと凝縮したような、花の蜜そのものを食べているような味だった。蜂蜜の美味しさを初めて知った。あの小さな体で花 々を飛び回り、これだけのものを作り上げたのかと思うと蜂に対して敬意しか感じられなかった。
 同時に、冒頭の思いが湧いてきた。これだけのものを作るのに、蜂達はどれだけの時間を費やしただろう。どれだけの危険を乗り越えただろう。いや、乗り越えられずに死んでしまった蜂も少なくないだろう。危険を冒し、せっせと集めた蜂蜜を、一瞬のうちに人間に奪われてしまう蜂達はどんな気持ちだろう。そんな感情に埋め尽くされ、蜂が気の毒でならなかった。
 しかし、そんな蜂達の努力を目の当たりにしたからこそ、私は1滴も残さず大切に蜂蜜を食べる。下品だとは思いつつ、蜂蜜をすくいとったスプーンさえも丁寧に舐めとる。彼らの努力の結晶を決して無駄にはできない。あの日、彼らは私に蜂蜜の味を教えてくれた。しかしそれ以上に、自分達の命を懸けた努力の賜物である事を教えてくれた。
私はこれからも蜂蜜を頂く。蜂達への敬意と感謝を忘れず、一滴も余す事なく。

 

(完)

 

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