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蜂蜜エッセイ応募作品

人の心の十 %は蜜蜂?

渡辺 碧水

 

 ある著書の中で巧みな表現の比喩に出合った。
 「人間は、九十 %は猿だが、十 %は蜜蜂である」というもの。
 その本は『社会はなぜ左と右にわかれるのか』(ジョナサン ・ハイト著、紀伊國屋書店、二〇一四年四月発行)。著者はアメリカの社会心理学者。
 比喩は「なぜ対立は過激化してしまうのか」という論議で使われた。
 一般的に、政治や宗教の問題は、根深いところにある対立に起因する。その対立は過激化し、排他的になりがちである。敵対する相手を口汚くののしる。一方、仲間同士の強い結束や一体化を促す。対立は集団的にまとまろうと加速化する。
その理由を、ハイトは得意な比喩を用いて説明した。
 「猿」を、人間の自己中心な側面の説明に用いた。自分の利益を第一に考え、利益を得るために他人と競争を繰り返す。人間の行動の九十 %は猿の性質で説明できるという。
 もう一つの「蜜蜂」とは、何かの拍子でスイッチが入り現れる、他人の利益を重視する人間の一面である。働き蜂が、大きな巣を作り、それを維持し、その存続のために自分の生涯を捧げたり、時には自分の身を犠牲にして侵略者と戦ったりするような側面である。人間の行動の十 %は蜜蜂の性質で説明できるという。
 人間はほとんどの場合、猿のように利己的な遺伝子に従って行動し、より強い者が群れのボス猿のように集団に君臨する社会を作ってきた。
 しかし、ある条件が整うと、蜜蜂スイッチが入り、利他的な集団に変わり、協調や役割分担を行うことで、集団間の競争においては、我が身を投げ打って戦うことがある。その結果、協調できる集団がバラバラな集団を打ち負かし生き残ってきた。
 人間は、強いボス猿になりたいと願う存在であると同時に、時には蜜蜂のような自己犠牲をいとわない行動に出ることもある。
 ハイトの言葉によれば「私たちの遺伝子には、蜜蜂スイッチが埋め込まれている」ようだ。
 人間は他人とつながることで技術と文化の発展を可能にした。蜜蜂スイッチがなければ、今日の人類の発展はあり得なかっただろう。

 

(完)

 

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